髄膜炎の原因、症状、治療、予防可能性

  • 作成:2016/10/14

髄膜炎は、脳を包む「髄膜」という部分に炎症が起きている状態です。原因となる菌やウイルスは多様です。原因、症状、治療や各種疑問を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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髄膜炎とは一体どんな症状?

髄膜炎とは?脳炎とどう違う?

髄膜炎とは、脳を包む「髄膜(ずいまく)」という部分に炎症が起きている状態を指します。髄膜は細かくみると3層の膜から出来ており、脳に近い内側から「軟膜(なんまく)」「くも膜」「硬膜(こうまく)」という名前で呼ばれています。

「軟膜」は、その名前の通り軟らかく薄い膜で、脳の表面にぴったりとくっついて脳を覆っています。「くも膜」は軟膜の外側をゆるく包み込んでおり、一枚の膜というよりも蜘蛛の巣のような構造をしているためこのような名前で呼ばれています。くも膜の外側は、しなやかで丈夫な「硬膜」という膜があります。

髄膜炎では主にくも膜と軟膜の間の空間、「くも膜下腔(かくう)」という部分に炎症が起こります。

くも膜下腔には、「脳脊髄液(のうせきずいえき):という液体が詰まっており、髄膜と脳脊髄液は、脳を包み込んで衝撃から守る働きを持っているのです。

髄膜炎では、細菌やウイルスが髄膜に侵入して、脳脊髄液の中で増殖します。すると、細菌やウイルスと戦う役割を持つ血液の成分である「白血球」が。脳脊髄液に集まり。細菌やウイルスを直接攻撃したり、炎症を起こす物質(サイトカイン)を放出することで、くも膜下腔に炎症が広がり、髄膜炎になるのです。

髄膜炎と似た病気に「脳炎」がありますが、髄膜炎が、脳の外側の髄膜に炎症が起こるのに対して、脳炎では脳そのものに炎症が起こるという違いがあります。

また、髄膜炎には、「細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)」と「無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)」の2種類があり、種類によって、原因や治療、経過なども異なるということが知られています。

髄膜炎の原因 髄膜炎菌?肺炎球菌?

髄膜炎の原因は細菌やウイルスによる感染症です。以下の2つに分けられます。

細菌性髄膜炎→細菌感染によって起こる髄膜炎
無菌性髄膜炎→ウイルス感染によって起こる髄膜炎

無菌性髄膜炎では、脳脊髄液を顕微鏡で見た際に細菌が見られないために「無菌性」髄膜炎という名前がついていますが、脳脊髄液の中には細菌よりも小さなウイルスが存在しています。また細菌性髄膜炎と無菌性髄膜炎では治療や経過も異なることが知られています。

細菌性髄膜炎は、医学が発達した現在でも一度発症すると死亡する可能性も高く、また重い後遺症を残すこともあるため非常に重大な病気です。細菌性髄膜炎は比較的小児(子供)に多く、原因とある菌も年齢によって以下のように異なります。

新生児から生後3カ月:B群連鎖球菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、リステリア菌
生後3カ月以降から幼児:インフルエンザ菌(Hib:ヒブ)、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌
年長児から青年期:肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌
成人:肺炎球菌、髄膜炎菌
高齢者(50歳以上) :肺炎球菌、グラム陰性桿菌、リステリア菌

原因菌の多くは、「飛沫感染(ひまつかんせん)」といって呼吸時に菌を吸い込んで感染が成立します。感染後は血液を通じて髄膜に菌が到達すると考えられています。細菌性髄膜炎の場合、飛沫感染以外にも、頭部のケガなどで直接頭部から細菌が侵入することにより感染したり、中耳炎、副鼻腔炎、扁桃腺など脳に近い病気の部分から炎症が波及したり、肺炎、心内膜炎など離れたところから血流により細菌が運ばれ感染することもあります。また新生児のB群連鎖球菌感染症は生まれるときにお母さんから菌がうつって感染する場合があります。

以下、日本で細菌性髄膜炎の主な原因となるHib、肺炎球菌、髄膜炎菌の感染症について記載します。


・インフルエンザ菌(Hib:ヒブ)

ヒブ(Hib,正式には「ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型」)による感染症です。小さな子供がかかると命に関わる重大な感染症を起こすことがあります。Hibは普段は鼻やのどの奥にいて、普通は症状を出しません。保育所など小さな子どもが集団生活をする場では、ヒブや肺炎球菌の検査をすると、子どもたちの鼻などから良く見つかります。このように身体の表面に菌が存在しても身体に対してとくに有害な反応を起こさない菌を「常在菌(じょうざいきん)」と呼びます。常在菌のままでは心配ありませんが、元気な子どもでもこれらの菌が何かの拍子に血液の中に入り込むことがあり、そのうち一部の子どもでは体のあちこちに菌が着いて炎症を起こし、Hib感染症となることがあるのです。

Hib感染症では、「肺炎」「喉頭蓋炎(こうとうがいえん)」「髄膜炎」などを起こします。

「喉頭蓋」とはのどの奥にある呼吸に関わる器官のことで、Hibによって、喉頭蓋に炎症が起こると、喉頭蓋が腫れて、空気の通り道が狭くなり、呼吸困難を起こして命に関わる事態になるケースもあります。

またHibが髄膜に付着して炎症を起こすと「髄膜炎」になります。Hib感染症による髄膜炎の初期症状は、発熱や不機嫌になるといった程度のもので、血液検査を行っても診断が難しいのが現状ですが、そのうちけいれんや意識障害が現れます。

Hibは抗生剤が効きにくい「耐性菌(たいせいきん)」が増えてきているため。治療が困難な面があり、亡くなる子どもも2%から5%おり、脳の後遺症が30%くらいに残ります。また、後遺症が無いように見えても、中学生ころになって、軽度の知能低下が分かることもあります。


・肺炎球菌

肺炎球菌も、常在菌の一つですが、小児や高齢者などで、感染症を起こしやすい特徴があります。特に、2歳以下の子どもは肺炎球菌に対する免疫がほとんどなく、小児の肺炎球菌感染症は重症化することが多くなります。肺炎球菌感染症では「髄膜炎」「菌血症(きんけつしょう)」「敗血症(はいけつしょう)」「重症の肺炎」「細菌性中耳炎」などの病気を起こします。「菌血症」や「敗血症」はともに、菌が血液の中に入り込む病気です。

肺炎球菌による髄膜炎の初期症状も、Hib同様、発熱や不機嫌になるくらいで、血液検査を行っても診断が難しいのが現状ですが、そのうちけいれんや意識障害が現れます。

肺炎球菌も抗生剤が効きにくい耐性菌が増えてきているため治療が困難な面があり、予防が大変重要になります。肺炎球菌による細菌性髄膜炎の死亡率は7%から10%、後遺症率は30%から40%と、Hibによる髄膜炎に比べて、死亡と後遺症の比率が高くなります。また後遺症がなく、治ったと思われた子どもが、中学生ごろになると軽い知能障害がはっきりしてくることがあるのも、Hib同様です。

なお、肺炎球菌による肺炎は、ウイルス性肺炎と異なってたいへん重症になります。中耳炎の場合は、耐性菌が多いので重症で治りにくくなります。


・髄膜炎菌

鼻水や咳による飛沫感染(ひまつかんせん)で、髄膜炎菌が、鼻やのどから身体に入り込み感染を起こします。菌血症や敗血症、細菌性髄膜炎などの病気を引き起こします。初期症状は、Hibや肺炎球菌同様、発熱、頭痛、嘔吐など、風邪の症状に似ているため、早期診断がとても難しい病気です。

ただ、髄膜炎菌性髄膜炎は、他の細菌による髄膜炎と比べて、症状が急激に進行することが特徴であり、意識障害、ショック、全身性出血などを起こします。また、発症後2日以内に5%から10%が死亡するという報告もあり、いったん発症してしまったら救命するのも困難な危険な病気です。

幸い日本国内では髄膜炎菌感染症の報告は非常に少なく、日本国内で感染する可能性は低いと考えられています。しかし、米国では、予防接種が推奨されているほか、アフリカでは現在でも多数の感染の報告があるため、海外渡航される方は予防接種を行ったほうが良い場合があります。

無菌性髄膜炎の原因 おたふく風邪も影響?

無菌性髄膜炎のほとんどは、ウイルス感染によって起こり、別名「ウイルス性髄膜炎」とも呼ばれています。髄膜炎全体の7割程度が無菌性髄膜炎で、細菌性髄膜炎に比べて死亡率が比較的低く、後遺症も残りにくいことが特徴ですが、重症の場合は死に至る可能性もあるため重大な病気であることは間違いありません。

繰り返しになりますが、「無菌性」の意味は、「原因が菌でなく、ウイルスなど」という意味です。勘違いしている方もいるかもしれませんが、菌とウイルスは、増殖の仕方や形式などの観点から、生物学的には、まったく別のものです。

無菌性髄膜炎の70%から80%程度が、「エンテロウイルス」という種類に属するウイルスによって引き起こされます。エンテロウイルスの感染症は、夏から秋に多くなるため、無菌性髄膜炎も、夏から秋に患者さんが多くなる傾向にあります。また、エンテロウイルスのほか、おたふく風邪を起こす「ムンプスウイルス」や口唇ヘルペスを起こす「ヘルペスウイルス」なども無菌性髄膜炎を起こす重要な原因と考えられます。

ムンプスウイルスによる髄膜炎はウイルス性髄膜炎の中ではエンテロウイルスの次に多く、おたふくかぜの患者さんの3%から10%に合併すると言われています。ムンプスウイルスは中枢神経への親和性が高く、髄膜炎のほか脳炎を起こすこともあります。

ムンプスウイルスの感染経路は、唾液を通じての空気感染や接触感染などです。ウイルスが身体に入り込んでから実際に症状が現れるまでの期間(潜伏期間)は2週間から3週間です。感染しやすい年齢は2歳から12歳の子供が一般的ですが他の年齢でも感染する場合もあり、大人がかかると重症化しやすくなります。また子供や女性の場合、感染しているのに症状がでない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」が30%から40%あります。

おたふくかぜの症状としては悪寒(寒気)、頭痛、食欲不振、発熱、けん怠感がみられ、少し遅れて唾液腺が腫れる症状がみられます。唾液腺の腫れがみられてから4日から5日後に、髄膜炎を発症するケースが多いとされており、髄膜炎を起こした場合は再度の発熱、頭痛、吐き気、嘔吐などがみられます。

また、ムンプス髄膜炎は髄膜炎の中では比較的症状が軽い部類に入り、多くは良好に回復します。しかし、まれに顔面神経麻痺や聴力障害などの後遺症が残る場合があり、注意が必要になります。

ムンプスウイルスによる髄膜炎は、ワクチン接種によって予防が可能です。お子さんがいる家庭の方はしっかりと予防接種を受けるように心がけましょう。

髄膜炎は感染する?しない?

髄膜炎の原因には様々なものがありますが、中には感染する髄膜炎もあります。

代表的なものが、髄膜炎菌感染による細菌性髄膜炎です。髄膜炎菌はヒトからヒトに感染することが知られており、鼻や口から感染します。感染後、菌が血液中に入って、高熱や皮膚・粘膜の出血斑、関節の炎症などを起こします。髄膜に菌が到達すると、髄膜炎を起こします。髄膜炎菌に感染しても髄膜炎を起こさないケースもありますが、髄膜炎を起こした場合には治療しないと死亡率がほぼ100%に至る危険な病気です。

髄膜炎菌には抗生剤がよく効くため、早期に治療を行うことで治癒する可能性があります。ただ、髄膜炎菌性髄膜炎は、他の細菌による髄膜炎と比べて、症状が急激に進行することが特徴です。また発症後2日以内に5%から10%が死亡するという報告もあり、発症すると救命が困難となります。

現在の日本では髄膜炎菌の感染はまれになりましたが、アフリカなどでは未だ多数の患者が発生しているため、海外渡航の際にはワクチン接種を行った方が良い場合があります。

また、髄膜炎菌のほか、小児の髄膜炎の原因菌として重要なインフルエンザ菌、肺炎球菌などもヒトからヒトへ感染する場合があります。

「インフルエンザ菌」とは、いわゆるインフルエンザの原因となる「インフルエンザウイルス」とは全く別の細菌で「ヘモフィルス・インフルエンザ」とも呼ばれます。とくにb型インフルエンザ菌(略してHib:ヒブとも言います)が乳幼児で肺炎や重症髄膜炎を起こすことが知られており、5歳未満の髄膜炎の原因の中では70%と最多となっています。日本国内では1年に推定600人程度がHibによって髄膜炎を起こし、うち約5%が死亡、約25%に聴覚障害やてんかんなどの後遺症が残るという報告があります。Hibによる感染症は、初期症状がただの風邪と似ていて区別がつきにくく、診断が難しため、治療が手遅れになったり、抗生剤が効きにくいタイプの菌(耐性菌:たいせいきん)の出現により治療が難しいケースがあります。そのため、Hibについては、予防のワクチンの接種が強く推奨されています。

肺炎球菌は小児から高齢者まで幅広く敗血症や肺炎を起こす菌ですが、髄膜炎の原因となることもあります。呼吸器の感染症ではヒトからヒトに感染するため注意が必要です。肺炎球菌にもワクチンが存在するため、高齢者などではワクチンの接種が推奨されます。

髄膜炎の原因は大人と子供で違いがある?

髄膜炎の原因は大人と子供で違いがあります。また小児の中でも生まれたばかりの赤ちゃんと年長の子供では原因や感染経路が異なります。

【感染経路】
小児の細菌性髄膜炎の原因のうち、新生児の場合は出産時のトラブルや出産後の治療などによって感染し発症することが多いです。対して、年齢の進んだ乳幼児では上気道感染から髄膜炎に進行するケースが多くなります。

【原因】
新生児の細菌性髄膜炎の原因で重要なものはB群連鎖球菌、大腸菌などです。

対して、年齢の進んだ乳幼児の細菌性髄膜炎の原因で多いものは、インフルエンザ菌(Hib)、肺炎球菌などです。

大人の細菌性髄膜炎の原因で多いのは肺炎球菌、髄膜炎菌となります。

ウイルス感染による無菌性髄膜炎は、子供と大人のどちらにも起こりますが、比較的子供に多いとされています。

髄膜炎の予後はよい?悪い?完治する?

髄膜炎の予後は、以下の要素によって、大きく変わります。

・原因(細菌かウイルスか)
・年齢
・合併症の有無
・持病の有無

【原因】
基本的には、無菌性髄膜炎(ウイルスが原因のもの)は、細菌性髄膜炎に比べて症状が軽い傾向にあり、後遺症を残さず治る可能性も高いとされています。

無菌性髄膜炎の代表的な原因であるエンテロウイルスによる髄膜炎は、ほぼ後遺症を残さずに完治すると言われています。

細菌性髄膜炎は原因となる菌にもよりますが、死亡率は2%から10%、30%程度にてんかん、聴力障害、発達遅延、精神障害などの後遺症を残すことが知られています。

【年齢】
年齢からみると、年齢が若いほど髄膜炎の症状が分かりにくく、病気の進行も急激なため診断や治療が遅れる可能性が高いと言えます。治療が遅れるるほど重症化しやすく、死亡する率や後遺症を残す可能性も高くなると言えるでしょう。特に赤ちゃんの髄膜炎の初期症状は高熱、不機嫌なくらいで、血液検査を行っても髄膜炎を発見することは難しいのです。そのうちにぐったりする、けいれん、意識障害などが現れます。

【持病、合併症】
高齢者は、体力や抵抗力がもともと低く、心臓病や糖尿病、腎臓病などの持病がある方が多いため、健康な成人と比較すると重症化しやすく、死亡率も高い傾向にあります。

合併症としては、敗血症(血液に菌が混ざる病気)や肺炎、全身性の出血、脳炎などを合併すると治療期間が長くなり、後遺症を残す可能性も高いと言えるでしょう。

髄膜炎は再発する?

髄膜炎の再発の可能性については、きちんと治療を行い治癒したケースについては再発することはありません。しかし、抗生物質が効きにくいタイプ(薬剤耐性菌)の細菌感染によって髄膜炎が起こった場合などは治療が困難であり、一度治ったように見えても細菌がわずかに体内に残っているケースがあります。わずかでも体に細菌が残っている場合は、時間をおいて症状が再燃することもあるため注意が必要です。

髄膜炎には初期症状がある?どんなもの?

髄膜炎の初期症状は、発熱、頭痛、吐き気などです。髄膜炎の発熱は38度から40度といった高熱が何日も続くことが特徴で、解熱剤を使用するといったん下がりますが、薬がきれると再度熱が上がってきます。乳幼児では高熱が出てぐったりして元気がない、ミルクがあまり飲めない、嘔吐などで病院を受診して、検査を受けるケースが多いようです。

また上記の他、首の後ろが硬くなる「項部硬直(こうぶこうちょく)」という症状や膝が曲げ伸ばししにくいなどの症状がみられることがあり、「髄膜刺激症状(ずいまくしげきしょうじょう)」と呼ばれます。

「項部硬直」とは、患者さんが仰向けに寝た状態で、他者が後頭部を手で持ち上げ、胸につけるような体勢にしようとした時に抵抗を感じたり、痛みが出る症状のことで、髄膜炎に特徴的な所見として有名です。ただ、髄膜炎で必ず出るという訳ではないので注意が必要です。

小児では、原因不明の高熱に加えて以下の症状がみられる場合はすぐに小児科を受診して検査を受けましょう。

・機嫌の悪さが増している、または異常に眠そうにしている
・体温が低くなった :重症感染症では逆に体温が低下することがあります。
・食事をしたがらない(ミルクが飲めない)
・けいれん発作が起きた
・首が硬直している :髄膜炎では首の後ろが硬くなることが知られていますが、1歳以下でははっきりしないとされています。

成人では高熱に加えて以下の症状がみられる場合はすぐに病院を受診して検査を受けましょう。

・錯乱:うわごとを言う、話のつじつまが合わない
・昏迷:刺激してもすぐにウトウトと眠ってしまう、意識がないけいれん発作
・発熱、発疹、首の硬直のうち2つ以上がある

髄膜炎の症状 頭痛、熱、痙攣などはある?意識不明になることがある?回復の可能性は?

髄膜炎の症状では、高熱、頭痛、吐き気、けいれんなどが特徴的です。

髄膜炎の発熱は38度から40度の高熱が、数日間にわたって続きます。解熱剤を使用するといったんは熱が下がりますが、少したって薬の効果がきれてくると再度熱が上昇します。高熱に伴って激しい頭痛や吐き気、嘔吐が起こります。特に、髄膜炎の頭痛は通常の頭痛と異なり、「頭が割れるような」「今までに経験がないほど激しい」頭痛などと表現されることが多い非常に激しい痛みとなります。

髄膜炎の初期では発熱、頭痛、嘔吐などの症状が主体となりますが、次第に髄膜炎が進行して症状が悪化してくると、意識障害やけいれんを起こします。「意識障害」というと意識を失ってしまう、気絶した状態と考える方が多いのですが、実際には意識障害にも段階があり気絶するのは最も症状が重いケースです。軽度の意識障害では「なんとなく反応がぼんやりしている」「話すことのつじつまが合わない」「元気がないように見える」程度のことも珍しくはありません。

特に、うまく症状が訴えられない赤ちゃんや高齢者では、軽度の意識障害を発見することが難しく、診断が遅れがちになる原因とも言えます。

赤ちゃんでは、高熱や嘔吐が続き、ぐったりして活気がなくなってきたような場合には、意識障害を起こしている可能性があります。また刺激しても、あまり反応せず、すぐにウトウトと眠ってしまうような状態も要注意です。すぐに小児科を受診する必要があります。

高齢者の感染症では、一般的に熱が出にくく、髄膜炎の特徴である38度から40度の高熱ではなく、37度台の微熱でも髄膜炎を起こしているケースもあります。お家に高齢者の方がいらっしゃる場合、普段と違って何となく元気がなく、食事がとれないような場合は、肺炎や髄膜炎の可能性が否定できません。早めに内科を受診して診察を受けたほうが安全と言えるでしょう。

意識障害が進行すると、次第に刺激に対して反応しなくなり、ついには意識不明の状態に陥ってしまいます。これは髄膜の炎症が脳に影響を及ぼし、脳の機能が低下していることを示しています。

意識障害を起こしている場合、炎症が髄膜だけでなく、脳そのものにも波及して脳炎を起こしている可能性も否定できません。

脳炎を起こして、脳の細胞がダメージを受けると、抗生剤などで治療を行って炎症がおさまっても、脳の神経組織に傷あとが残ってうまく機能しなくなり、重い後遺症を残す可能性があります。また放置すると髄膜炎は、数時間単位で症状が進行します。

髄膜や脳の炎症が進行すると脳が腫れた状態となり、頭蓋骨の内部に上手に脳が収まらなくなって、頭蓋骨から脳が外に向かって押し出される「脳ヘルニア」という状態になります。脳ヘルニアになると、脳のうちでも呼吸を司る重要な部分が圧迫され、呼吸が止まって亡くなる可能性が高くなります。

そのため、髄膜炎で意識障害をおこした場合、救急車などで一刻も早く病院を受診し、正確な診断と治療を受けることが何よりも大切なのです。意識障害を起こしても、適切な治療が迅速に開始されれば、回復する可能性があります。

髄膜炎の症状に大人と子供で違いがある?

髄膜炎の症状は、発熱、頭痛、嘔吐、意識障害などですが、大人と子供など年齢の違いによって症状の出方がやや異なる場合があります。

発熱については、子供や健康な成人でははっきりとしており、38度から40度の高熱が出るのが通常です。しかし、高齢者は一般的に熱が出にくいことが知られており、敗血症などの重症感染症を合併した場合、逆に体温が低下することもあります。そのため37度台の微熱でも、頭痛や嘔吐、意識障害がみられた場合、髄膜炎の可能性を否定できないため、病院を受診して診察を受ける必要があります。

また髄膜炎では「項部硬直」という特徴的な所見がみられることが知られています。「項部硬直」とは、首の後ろが硬くなり、仰向けに寝た状態で首を前屈させて顎を胸につけようとすると、痛くてできない症状です。ただ、項部硬直は、高齢者や赤ちゃんでははっきりしません。

また、髄膜炎が進行すると頭蓋骨の内部に「脳脊髄液」がたまった状態となる「水頭症」という症状がみられるケースがあります。水頭症では、頭蓋骨の内部の圧が上昇して、脳が圧迫されるため、激しい頭痛や嘔吐、ふらつき、失禁などが起こります。

ただ、赤ちゃんは頭蓋骨がまだ柔らかい上、頭蓋骨がいくつかのパーツに分かれていて動くことができるため、圧が上昇せず、水頭症の症状が出にくいことがあります。

髄膜炎の合併症はどんなもの?

髄膜炎の合併症には以下のようなものがあります。

けいれん
呼吸障害
敗血症
水頭症(脳に水がたまる)
硬膜下膿瘍


・けいれん


髄膜炎では、脳を包む膜に広く炎症が起こる影響で、脳の機能に異常をきたし、けいれんがしばしば現れます。治療には抗けいれん薬を投与します。

脳は神経細胞が集まってできており、神経細胞同士は微弱な電気信号を送って機能しています。しかし、何らかの原因で脳に異常な電気信号が起こると、神経の機能が異常をきたし、けいれんとなって症状が現れると考えられています。髄膜炎や脳炎では炎症の結果、異常な電気信号が発せられて、けいれん発作を起こすと考えられます。


・呼吸障害


髄膜炎で、脳の機能に異常をきたした結果、呼吸がうまくできなくなることがあります。治療には、人工呼吸器を使用します。

特に、髄膜炎の炎症が広がると脳の組織が腫れ、頭蓋骨の内部に上手に脳が収まらなくなって頭蓋骨から脳が外に向かって押し出される「脳ヘルニア」という状態になります。脳ヘルニアになると脳のうちでも呼吸を司る重要な部分が圧迫され、呼吸が止まって死んでしまう可能性が高くなるため早急な対応が必要になります。


・敗血症


細菌性髄膜炎は、しばしば敗血症を合併します。「敗血症」とは、本来菌が存在しないはずの血液中に菌が入り込んで増殖し、全身に炎症を起こす病気です。血液の流れに乗って、細菌が重要な臓器に入り込んで炎症を起こすため、肝臓や腎臓など生命の維持に重要な役割を持つ臓器の機能障害が起こります。症状が重い場合は死亡することもあります。

敗血症の治療は抗生剤の投与です。また敗血症になると、血液の機能にも異常が起こり、全身の細い血管が詰まったり、逆に全身から出血するため、皮膚に出血斑(発疹)がみられることもあります。


・水頭症(すいとうしょう)


脳に脳脊髄液という水がたまった状態です。脳はやわらかな組織であり、あたかも、豆腐が水に入っているように、脳脊髄液という水に浮かんだ状態で存在します。脳脊髄液は、常に新しく産み出され、脳の周囲を循環して、古くなったら吸収されることで、一定の量や環境を維持するように、できています。

髄膜炎では、脳脊髄液の産生や吸収がうまくいかないため、頭蓋骨の中に、脳脊髄液がたまってしまうことがあり、この状態を「水頭症(すいとうしょう)」と呼んでいます。水頭症では、硬い頭蓋骨の中に、水がたまってパンパンになってしまうため、内部の圧が上昇して脳を圧迫します。結果として、激しい頭痛や嘔吐、意識障害などが起こるのです。

水頭症によって頭蓋骨の内部の圧が更に上昇すると、脳が圧迫されて最悪死亡することもあるため、急いで圧を下げなければなりません。頭蓋内圧を下げる治療としては人工呼吸器の使用、薬の点滴、カテーテルによる脳脊髄液の排出などがあります。

人工呼吸器を使用して、血液中の二酸化炭素の濃度を下げると、頭蓋内圧が下がることが知られています。ただし二酸化炭素の濃度を下げることによる効果は、短時間しか続かないため、次に「マンニトール」という薬を点滴します。マンニトールは、脳内の水分を血流中に移動させる働きがあり、これによって頭蓋内の脳脊髄液の圧力が低下します。

人工呼吸器や薬で治療を行っても圧が下がらない場合は、カテーテルを使用して、直接脳脊髄液を体外に排出して、圧を下げる治療を行う場合もあります。


・硬膜下膿瘍(こうまくかのうよう)


髄膜に起こった炎症のため、頭蓋骨の内部に膿(うみ)がたまった状態です。膿がたまっている部分には、抗生剤が届きにくく、治療がすすまないケースがあります。また、膿がたくさんたまると、脳を圧迫して危険な状態になることもあるため、硬膜下膿瘍が認められた場合は手術などをおこなって、膿を直接取り除く場合もあります。

髄膜炎の後遺症はどんなもの?てんかん?

髄膜炎のうち、無菌性髄膜炎(細菌が原因でないもの)の多くは後遺症を残さず治るケースが多いとされています。

対して、細菌性髄膜炎は後遺症を残す場合や死亡率も高く、成人の場合では細菌性髄膜炎の致死率は約20%程度で、生存者の約30%に何らかの後遺症が残るとされています。また、小児の場合、致死率は5%以下で、後遺症の率は15%前後とされています。しかし、ヒブによる髄膜炎では、脳の後遺症が20%程度、肺炎球菌によるものは20%から30%といわれています。一見後遺症がないように見えても、年数が経つと知能障害が目立つようになってくることもあります。

患者さんの状態や背景によっても後遺症が残るかどうかが変わります。成人の場合は以下の項目に該当すると後遺症が残る可能性が高いとされています。

・高齢である
・髄液の細胞数が減少している
・原因菌が肺炎球菌
・入院時に意識障害がある

また、小児の場合は以下の項目に多く該当するほど後遺症が残る可能性が高いとされています。

・2歳以下
・髄液の細胞数が減少している
・原因菌が肺炎球菌
・入院時に意識障害がある
・呼吸障害がある
・紫斑(皮下出血のあと)がある

髄膜炎の後遺症には以下のようなものがあります。

・聴力障害
・水頭症
・てんかん
・精神障害
・麻痺
・認知機能低下

【聴力障害】
「細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014」(日本神経感染症学会)によると、細菌性髄膜炎の後遺症で最も多いのは、聴力障害とされており、全体の14%程度となっています。特に肺炎球菌による髄膜炎では約30%に後遺症が残り、難聴は20%を占めます。

また、無菌性髄膜炎のうち、おたふくかぜの原因である「ムンプスウイルス」というウイルスが原因となる髄膜炎でも難聴の後遺症が残ることがあります。髄膜炎の影響で、「内耳(ないじ)」という音を感じ取る神経の細胞が集まる耳の一部に炎症が起こり、音をうまく感じ取ることができなくなるためとされています。髄膜炎の後遺症である難聴は聞き取りにくい程度から全く聞こえないケースまで程度に個人差があり、また片耳だけに症状が現れることもしばしばみられます。

【水頭症】
水頭症は、頭蓋骨の中に「脳脊髄液」という水分が過剰にたまった状態を指します。

脳の内部には「脳室(のうしつ)」という空間がいくつかあり、脳室の中の「脈絡叢(みゃくらくそう)」という器官によって、血液から脳脊髄液が作られています。脳脊髄液は透明な水のような液体で、脳室や脳の表面を循環し、脳を保護する役割をもっています。

脳脊髄液の量は成人で120mlから150ml程度とされており、1日に400mlから500mlの脳脊髄液が新しくつくられるため1日に3回程度交換されている計算になります。

古くなった脳脊髄液は、脳の表面にあるくも「膜顆粒(くもまくかりゅう)」という器官から、静脈に吸収されることで量が増えないようになっています。ただ、髄膜炎になった場合、脳の表面付近で炎症が起こるため、くも膜顆粒の機能に異常が残ることが多く、髄膜炎が治った後も、くも膜顆粒から脳脊髄液をうまく吸収できなくなるため、頭蓋骨の中に脳脊髄液がたまってしまい水頭症となるのです。

水頭症の症状では「意識がボーっとする」「頭痛」「嘔吐」「まっすぐ歩けない」「意識障害」などが起こります。乳児では頭蓋骨が柔らかく、また頭蓋骨がいくつかのパーツに分かれている(癒合していない)ために、水頭症になっても、頭蓋骨が外側に大きく広がることとなります、頭蓋骨が広がる結果として、脳を圧迫は避けられるため、乳児の場合は、頭が大きくなる以外には症状が出にくいとされています。水頭症の治療は、頭にたまった脳脊髄液をカテーテルを用いて腹部に流す「シャント術」という方法や脳の手術が行われます。

【てんかん】
髄膜炎の後遺症でしばしばみられるのがてんかんです。

てんかんとは、脳に異常がおこり、けいれんを起こす発作を繰り返す病気です。脳は神経細胞が集まってできており、神経細胞同士は微弱な電気信号を送って機能しています。しかし、何らかの原因で脳に異常な電気信号が起こると神経の機能が異常をきたし、けいれんとなって症状が現れると考えられています。

髄膜炎や脳炎では、炎症が起きた結果、脳に傷跡が残ることがあります。結果として、傷跡の部分から異常な電気信号が発せられて、てんかんになるケースがあります。てんかんには発作を抑える「抗てんかん薬」と呼ばれる薬があり、治療には薬を継続して内服する(飲む)必要があります。

【精神障害、麻痺、認知機能の低下】
髄膜炎の後遺症では、精神障害、麻痺、認知機能の低下などが起こることがあります。これらの症状は、脳の機能異常に基づく症状です。

髄膜炎にかかって、まもない間は、意識障害、幻覚や妄想、物忘れ、見当識障害などがみられます。見当識障害とは、時間や空間、場所などがうまく認識できない状態です。

髄膜炎が治ったあとも、うつ状態や人格の変化、身体の麻痺や運動障害などが残るケースがみられます。また、髄膜炎を起こす前よりも、集中力が続かなくなったり、知能が低下したり、子供の場合だと、発達が遅れる場合もあります。知能障害や発達の遅れは、その後の生涯にわたって影響する重大な後遺症と言えるでしょう。

髄膜炎は病院の何科で診る?

髄膜炎は初期の症状が発熱、頭痛、嘔気・嘔吐などで、風邪に似ているため、最初は内科で診察を受ける場合が多いようです。また、家にいる間に急激に症状が進行し、意識障害やけいれんなどがみられた場合は、救急車で搬送されるため、救急外来を受診し、脳神経外科の医師が診察を行います。

病院の体制にもよりますが、一般的には髄膜炎は脳神経外科や内科で診療が行われます。

また、髄膜炎は肺炎や副鼻腔炎、中耳炎など、身体の一部の重症感染症に続いて、起こることも珍しくはありません。髄膜炎のもととなった感染症がある場合は、元の病気と髄膜炎の治療が平行して行われるため、内科と耳鼻科、呼吸器科、脳神経外科などが協力して、治療にあたるケースもあります。

髄膜炎の検査の概要 髄液検査?血液検査?MRI?CT?

4日から5日以上続く高熱、激しい頭痛、嘔気、嘔吐、けいれん、意識障害などから、髄膜炎を疑われた場合、血液検査や胸部X線検査などのほかに「髄液検査(ずいえきけんさ)」が行われます。

脳の中にある空間や脳の外側の「くも膜下腔」という部分は、「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という透明な液体で満たされていますが、脳脊髄液は脳だけでなく背骨の中にある「脊髄」という、神経の周囲にも存在します。

脳脊髄液は、別名「髄液(ずいえき)」とも呼ばれており、脳室にある「脈絡叢(みゃくらくそう)」という器官によって、血液から作られています。髄液は、常に新しく産生され、古くなった髄液は脳の表面にある「くも膜顆粒(まくかりゅう)」という器官から、静脈に吸収されることで、環境を一定に保つようになっています。

髄膜炎では、髄液が存在する「くも膜下腔」で炎症が起こるため、髄液に影響を及ぼし、髄液の性質や、圧に変化が現れます。頭蓋骨の中を検査するのは大変ですが、脳の中にあるのと同じ髄液が、背骨の中の脊髄の周囲にも循環しているため、実際には脊髄の周囲から、髄液を採取して検査を行うことで、髄膜炎の診断を行うことができるのです。

髄液は、脳や脊髄に異常が起こる様々な病気によって変化するため、「髄液検査」は、髄膜炎だけでなく、くも膜下出血やがんの脳転移などの検査にも有用です。

近年はCT検査やMRI検査などの機械が発達したため、髄液検査を行う機会は以前よりも減少傾向にあります。ただ、CT検査やMRI検査を行っても、結果がはっきりしない場合やCT検査やMRI検査で髄膜炎が疑われて更に詳しい検査を行う場合に、髄液検査が行われます。

髄液検査の流れとは?

実際の髄液検査では、背骨の隙間から、背骨の内部に針を刺して、髄液を採取します。針を刺して髄液を採取する際に誤って「脊髄」という重要な神経を傷つけてはいけないため、脊髄損傷の可能性が極めて少ないことがわかっている、腰の下の方の背骨の間に針を刺します。

背骨は椎体(ついたい)という大きな骨が連なって構成されています。椎体と椎体の間に針を刺しこむのですが、極めて狭い隙間しかないため、身体をまっすぐにしたままでは、針を椎体の間に通すことができません。そのためベッドに横になり、膝を抱えておへそをのぞき込むように身体を丸くすることで、椎体と椎体の間隔を少しでも広げて針を通りやすくします。

針を刺したときに雑菌が入ることがないよう、事前に針を刺す予定の部分を入念に消毒します。針を刺す部分に麻酔の注射を行い、髄液検査専用の極めて細い針を刺します。

背骨を刺すというと「とても痛そう」「怖い」というイメージをお持ちの方が多いのですが、椎体という骨には全く傷をつけないため、最初の麻酔の注射がチクッとする程度で、痛みはほとんどありません。

検査は問題がなければ通常10分から15分程度で終了し、検査中については痛みの訴えはほとんどなく「背中が押される感じがした」「一生懸命身体を丸くしていたらいつの間にか終わっていた」などと言う感想を持つ方がほとんどです。

髄液検査では、上記のように椎体の隙間から針を刺して、硬膜を通過し、くも膜下腔から髄液を採取します。くも膜下腔に針先が到達したことが確認されると、最初に髄液の圧を測定します。細菌性髄膜炎では特に液による圧力が高くなることが知られているためです。ただ、他にも脳や脊髄の炎症、腫瘍、出血などでも髄液の圧が上昇します。

次に実際に5mlから6mlの髄液を採取して、肉眼で色や浮遊物を調べます。正常な髄液は無色透明ですが、白っぽく濁っているときには「細菌性髄膜炎」、一見透明だけれども光にかざすとわずかに濁っている場合(「日光微塵:にっこうびじん」)は「ウイルス性髄膜炎」が疑われます。

また黄色っぽいときには、少量の出血や古い出血が疑われ、くも膜下出血では血液の色で真っ赤になるなど、色も診断の助けになります。

次に、髄液に含まれている成分を調べます。髄液検査で注意する必要がある主な項目は赤血球、白血球、糖、蛋白です。

赤血球が多いときには脳や脊髄のどこかで出血していると考えられます。

白血球が多い場合は、炎症が起こっていることを示していますが、白血球の種類によって更に判断が分かれます。白血球には幾つかの種類がありますが、白血球のうち「多核球」という種類が増加している場合は「細菌性髄膜炎」、リンパ球が増えているときには「ウイルス性髄膜炎」が疑われます。

次に髄液中の糖について調べます。髄液中の糖の値は、血糖値に応じて変動し、正常では血糖値の60%から70%程度です。細菌性髄膜炎では、髄液中の糖の値が著しく低下することが知られています。「髄液中の糖」と「血液中の糖」の比を確認して、0.4以下の場合に「細菌性髄膜炎」を疑うとされています。ウイルス性髄膜炎では髄液中の糖の値はあまり変化しません。脳出血などでは髄液中の糖の値が上昇します。また、髄液中の蛋白質が多くなると、細菌性髄膜炎や脳炎などが考えられます。

原因菌などを特定するグラム染色とは?培養とは?

最後に、髄液に細菌がいるかどうかを確認する検査を行います。「グラム染色」という方法と「培養」という方法があり、両方を行うことも珍しくありません。

グラム染色とは、髄液中に含まれる細菌を染色して人間の目に見えるように加工する方法のことです。通常、細菌は顕微鏡で見ても、なかなか人間の目には見えないのですが、特殊な薬品を使って色をつけることで顕微鏡で観察することが可能になります。細菌の種類によって染色後の色が違うことから、グラム染色で紫に染まる「グラム陽性菌」と赤に染まる「グラム陰性菌」の2つに大きく分けることができます。色だけでなく、それぞれ丸い形の菌(球菌)、長い形の菌(桿菌)に分け、「グラム陽性球菌」「グラム陰性桿菌」などと判断して、おおまかに菌の種類を見分けることができます。

グラム染色は、たくさんある細菌を「陽性か陰性か」「球菌か桿菌か」という観点から、4つに分類する検査であり、培養検査のように一つ一つの菌を細かく特定することはできません。しかし、グラム染色の結果から、細菌の種類を推定することは十分に可能であり、また何よりも「結果が早く出る」という点が、非常に優れています。検査室で、簡便に行うことができ、すぐに結果が出るために現在でも非常に有用な検査です。

「培養」とは、検査室で一定の環境を整えて、髄液中に含まれる細菌を育てて増やし、細菌を顕微鏡で観察することで、髄膜炎の原因菌を特定することを指します。細菌の種類によって効果がある抗生剤が異なるため、原因菌を特定できるかどうかは治療に大きな影響を及ぼします。

また、原因菌の特定だけでなく、特定された菌にどの抗生剤が効果があるかという点(「薬剤感受性」)も調べることができるため、培養の結果が出ると、最も効果がある抗生剤を確実に使用できるという利点があります。

ただし、培養の結果が出るまでには数日かかるため、培養の結果が出る前に、様々な菌に幅広く効果がある抗生剤で治療を開始し、培養の結果が出た段階で特定された菌に特に良く効く抗生剤に変更するという方法が広くとられています。

髄液検査では、肉眼による色や浮遊物の確認から、精密な成分測定まで様々な項目の検査を行い、診断や予後の判定を行うことができるのです。

血液検査の意味とは?

また、髄膜炎でも血液検査が行われますが、血液検査のみで髄膜炎の診断を行うことは困難です。髄膜炎の診断においては血液検査は補助的な存在であり、白血球の数や「CRP」と呼ばれる炎症の強さをみる項目が測定されます。

また、血液も髄液と同様に培養検査を行い、感染症の原因となっている菌の特定を行う場合もあります。

CT検査やMRI検査の意味とは?

またCT検査やMRI検査といった、画像検査も行われる場合があります。ただ、2016年時点では、まだCT検査やMRI検査の結果だけで、髄膜炎の診断を行うことはできません。髄膜炎だけでは、画像の所見がはっきりしないケースも多く、画像所見が正常でも髄膜炎は否定できないとされているためです。

しかし、実際には。髄液検査を安全に行う目的でCT検査やMRI検査が広く行われています。

髄液検査は、非常に有用な検査ですが、「脳ヘルニア」という状態の場合には決して髄液検査を行ってはならないと定められています。「脳ヘルニア」とは、脳が頭蓋骨の中で押されて位置がずれ、頭蓋骨にある小さな穴から脳が押されて、はみ出しかかっている危険な状態を指します。脳が炎症や出血を起こして、はれているときに脳ヘルニアの状態になる場合があります。

脳ヘルニアの患者さんに対して、髄液検査を行うと、髄液の圧が下がって、一気に脳が頭蓋骨の穴から外側に向かって引っ張られてしまう危険があるのです。脳がひっぱられて「脳ヘルニア」が悪化すると、すぐに呼吸が停止し、亡くなってしまうこともあります。そのため、脳ヘルニアの患者さんには髄液検査を行ってはいけません。

脳ヘルニアがあるかどうかを調べるためにCT検査やMRI検査などの画像検査が非常に役立つため、広く行われています。

髄膜炎の診断基準

髄膜炎の確定診断(間違いないという診断)は、髄液検査によって行われます。臨床症状や血液検査、画像検査などからは「強く髄膜炎を疑う」ことはできすが、髄液検査によって実際に髄液の中に炎症の反応が起こっていたり、細菌やウイルスの存在を確認することが確定診断になるのです。

日本神経治療学会による「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」によると髄液検査での必須項目は、以下の通りです。

①髄液初圧
②細胞数と分画
③髄液糖/血糖比
④髄液蛋白量
⑤グラム染色・検鏡
⑥髄液細菌培養

また、「髄液初圧上昇,髄液多形核白血球の増多,髄液糖の低下(髄液糖/血糖比が0.4以下),蛋白濃度の増加は細菌 性髄膜炎を疑う所見である」と記載されています。

無菌性髄膜炎については、ガイドライン上の診断基準はありませんが、細菌性髄膜炎と同様に髄液検査の結果によって原因を調査したうえで、診断して、治療していくことになります。

髄膜炎の治療 薬や副作用はどんなもの?抗生剤?

髄膜炎の治療は、原因によって大きく異なります。

「細菌性髄膜炎」が疑われた場合、抗生剤による治療をすぐに開始します。細菌性髄膜炎は、数時間の間に急激に悪化する場合もあり、治療の開始が遅れるほど状態が悪化し、後遺症が残る可能性も高くなってしまうため、診断してから30分から1時間以内に抗生剤の治療を開始することが望ましいとされています。

細菌性髄膜炎の原因となる菌にも多くの種類があり、また同じ種類の菌でも場合によって効果がある抗生剤が違います。そのため「原因菌の種類」「原因菌に効果がある抗生剤の種類」を特定してから最も効果がある抗生剤を投与することが、本来望ましいです。

ただ、原因菌や効果のある薬の種類を特定するためには、髄液の培養検査を行う必要があります。髄液の培養検査には、最低でも24時間以上かかってしまうため、培養の結果を待っていては治療が手遅れになってしまうのです。

そのため、実際の現場では、髄液のグラム染色という方法でおおまかに原因菌を推定し、おそらく効果があると推定される抗生剤の点滴をすぐに開始します。

同時に髄液の培養検査のための材料を集め、培養の結果が出たら、より効果がある抗生剤に変更して治療を行います。

抗生剤の副作用にはアレルギーや下痢、発疹など様々なものがあります。ただ、頻度は低く、患者さんの体質や年齢に合わせて使用することで、効果的かつ安全に治療を行うことができると考えられます。

髄膜炎へのステロイドの効果とは?

また、細菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎の両方にステロイドの点滴が使用さることがあります。

ステロイドは、炎症を抑える強力な効果を持っており、ウイルスや細菌によって起こった炎症の反応を抑えることで、症状を軽くすることができます。髄膜炎では、くも膜下腔や髄液に、広く炎症が起きますが、実際は、髄膜炎に伴う炎症がすべて細菌やウイルスそのものによって、引き起こされている訳ではありません。

細菌やウイルスが、くも膜下腔に侵入すると、身体の免疫システムが反応し、「サイトカイン」という細菌やウイルスを攻撃して、炎症を起こす物質が放出されます。サイトカインの放出によって、くも膜下腔に広く炎症の反応が起こっているのが「髄膜炎」なのです。ステロイドは、サイトカインの産生を抑えることで、結果的に髄膜炎の炎症や症状を軽くし、後遺症の発生についても少なくすると考えられています。

ステロイドの副作用は「免疫力の低下」「血糖値の上昇」「骨密度の低下」など多数あります。ただ、ステロイドの炎症を抑える作用は、非常に強力であり、現在では、炎症を抑える意味で、ステロイドよりもすぐれた薬剤はありません。副作用も多い薬ですが、その優れた効果のためにしばしば用いられています。

無菌性髄膜炎は、通常抗ウイルス薬を使用しなくても治ります。例外的に「ヘルペスウイルス」や「サイトメガロウイルス」という種類のウイルスには、抗ウイルス薬がよく効きます。この場合、ステロイドの他に抗ウイルス薬を使用して治療を行います。

また、無菌性髄膜炎はウイルス以外にも、「結核菌」「梅毒」「寄生虫」「がん」などが原因で起こることがあります。結核菌や梅毒、寄生虫による髄膜炎には、原因に応じて効果がある抗生剤を使用します。また、がんによる髄膜炎の場合は、抗がん剤や放射線治療を行う場合があります。

髄膜炎の治療 手術をすることがある?どんなもの?

髄膜炎の治療は基本的には抗生剤やステロイドなどの薬を点滴することによって行われます。しかし細菌性髄膜炎の結果として、髄膜の一部に膿がたまった状態になることがあり、「硬膜下膿瘍(こうまくかのうよう))と呼ばれます。硬膜下膿瘍が起きた場合は、抗生剤の点滴だけでは治すことが難しいため、手術を行ってたまった膿を取り除くことがあります。

硬膜下膿瘍は、髄膜の一番上の層(硬膜)と中間の層(くも膜)との間に、膿がたまることによって起こります。細菌性髄膜炎の小児に、2%から10%で、発生するという報告もあります。他にも、頭部外傷や重症副鼻腔炎、敗血症などに続いて、髄膜炎と並行して起こる場合があります。

放置すると、脳に炎症を起こしたり、膿瘍が脳を圧迫するために意識障害やけいれん、昏睡状態となり、死亡する非常に危険な状態です。

また、髄膜炎の原因が、副鼻腔炎や耳の重症感染症である場合、鼻や耳の手術を行う場合もあります。

髄膜炎の治療に子供大人と大人で違いがある?

髄膜炎の治療の基本は、抗生剤やステロイドの点滴であり、基本方針は大人も子供もあまり変わりません。

しかし、一般的に子供は大人とくらべて病気の進行が早く、体力もあまりないため、悪化しやすい傾向にあります。治療が遅れると手遅れになる可能性も高いため、症状から髄膜炎が疑われた場合、大人よりも更に迅速な治療の開始が必要となります。

また、治療の内容では、大人と子供では使用する抗生剤の内容がやや異なったり、ステロイドの使い方にも違いがみられることがあります。

髄膜炎の治療で入院する?入院期間は?入院しないこともある?

髄膜炎の治療は基本的に入院となります。診察時は軽く見えても、後から症状が急激に悪化することもあるため、「髄膜炎」の診断がついた場合、基本的に入院が必要となるのです。

髄膜炎は、数時間単位で急激に進行し、あっという間に意識障害やけいれんを起こす場合があります。呼吸状態が悪くなった場合は人工呼吸器、腎臓の機能が悪くなった場合は人工透析など、様々な医療行為が必要になる可能性があります。状態の変化に応じて、最適な処置がとれるように医療スタッフの注意深い観察のもとで、治療が行われます。

また、髄膜炎の治療の基本である抗生剤やステロイドなどの点滴も、24時間にわたって行わなければなりません。

入院期間は症状によって個々に違いがありますが、軽症の場合でも1週間から10日間程度の入院が必要です。髄膜炎の治療だけでも1カ月程度入院することも多く、意識障害やけいれん、敗血症などの合併症の治療も必要な場合は、数カ月間の入院が必要なことも珍しくはありません。

髄膜炎の予防 予防接種は効果ある?ヒブワクチン?肺炎球菌ワクチン?

日本で、2016年現在、一般的に接種が行われている細菌性髄膜炎の予防に役立つワクチンとしては「ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib:ヒブ)ワクチン」「肺炎球菌ワクチン」「おたふくかぜ(ムンプスウイルス)ワクチン」があります。

適切な予防を行うためには、ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンは生後2カ月からの接種開始と、生後1年での追加接種が必要です。

おたふくかぜワクチンは1歳から接種を開始し、1回目接種の2年から4年後に、2回目の追加接種を受ける必要があります。

ワクチンのデメリットとしては、接種した部分の発赤(赤くなること)や腫れ、痛みなどがありますが、一時的な反応であり、全身に影響を及ぼすような重大な副反応はあまり報告されていません。

ヒブ、肺炎球菌ともに、最近は抗生剤が非常に効きにくい「薬剤耐性菌(やくざいたいせいきん)」というタイプが増えてきています。薬剤耐性菌に感染して髄膜炎になると、抗生剤による治療が非常に難しく、症状が悪化して後遺症が残ったり、死亡する確率も大幅に上昇します。そのため、ワクチンで予防できる菌についてはしっかりと予防を行うことが何よりも大切なのです。

実際に、日本では、これらのワクチンの導入と接種率の上昇によって、髄膜炎の発生率が下がっていることが報告されています。

また、肺炎球菌ワクチンについては、高齢者の接種も奨励されています。どちらかというと高齢者の場合は、髄膜炎だけでなく、肺炎球菌による肺炎を予防する目的で行われています。具体的には、5年に1回の定期接種が勧められています。お家に65歳以上の高齢者がいる場合は、自治体に確認してみると良いでしょう。

また、海外の特定の地域に渡航する方に推奨されるのが、髄膜炎菌ワクチンです。

髄膜炎菌による髄膜炎は、日本では非常に少なくなったため、一般的には髄膜炎菌ワクチンは接種が行われていません。ただ、サハラ以南のアフリカは、現在でも髄膜炎菌の流行地帯であり「髄膜炎ベルト」と呼ばれています。サハラ以南のアフリカに渡航する場合、髄膜炎菌に感染するリスクが高く、髄膜炎菌ワクチンの接種が推奨されます。

髄膜炎菌ワクチンは、サウジアラビアのメッカを巡礼する方や、アメリカに留学する際に滞在先からワクチンの接種を求められるケースもあります。

髄膜炎の予防 予防接種以外はある?ない?

髄膜炎の予防について、予防接種以外の確実な方法は残念ながらありません。しかし、「髄膜炎」といっても、基本的には感染症ですので、感染症にかかりにくく、かかっても悪化しにくい身体づくりが大切になります。

ストレスや寝不足、過労などは、体力や免疫力を低下させ、感染症にかかりやすく、かつ悪化しやすい身体の原因になってしまう恐れがあります。規則正しい生活やバランスのとれた食事、適度な運動を心がけましょう。

副鼻腔炎や中耳炎など、鼻や耳の感染症から菌が身体に入り込んで髄膜炎になるケースもしばしばみられます。副鼻腔炎や中耳炎などを発症している方は、放置せず、軽いうちにきちんと治療を行うことで、将来の髄膜炎の危険性を減らすことができると言えるでしょう。

また、新生児の髄膜炎は、分娩時に、菌がお母さん側から赤ちゃんに移って感染を起こす場合がほとんどです。妊娠中のお母さんはきちんと妊婦検診を受け、赤ちゃんに危険な菌が自分の身体にいないかチェックを受けることが予防につながります。また、菌が発見された場合、お医者さんの指示に従って抗生剤による治療を行うことで、生まれたばかりの赤ちゃんが、敗血症や髄膜炎になる危険性を減らすことができます。

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