卵巣がんの原因と種類、ステージごとの生存率 遺伝は関係する?出産経験、初経・閉経時期でリスクが変化

  • 作成:2016/05/12

卵巣がん(以下、卵巣癌)は、治療の見通しが良くない癌の1つです。一言で「卵巣癌」といっても、種類は多様です。原因や、ステージごとの生存率も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は6分です

卵巣がんの原因はどんなもの?
卵巣とはどんな機能がある?
卵巣がんの原因 出産経験、初経、閉経時期も関係
卵巣がんの原因 遺伝も関係する?
卵巣がんには種類がある?類内膜腺癌とは?明細胞腺癌とは?
胚細胞腫瘍とは?性索間質性の腫瘍とは?
卵巣がんのステージの考え方と生存率 ステージ4とは?

卵巣とはどんな機能がある?

卵巣は、子宮の左右の外側に1つずつ存在する3センチから4センチくらいの楕円形をした臓器です。イメージとしては、自分の手の親指くらいだと思ってください。そして卵巣の重要な機能は、「卵子の形成」と「内分泌機能」です。卵巣では未熟な卵子が成熟し、やがて排卵されます。また、卵巣から周期的に分泌されるホルモンによって、月経周期(生理のリズム)がコントロールされています。

卵巣には卵子を育てる袋のような「卵胞(らんぽう)」というものが、存在しています。女性は生まれたときすでに、未熟な原始卵胞(げんしらんぽう)がおよそ200万個存在しています。そして生まれてから月経の始まる思春期のころまでに原始卵胞の数は減少し、その数は10分の1以下になるとされています。最終的に、女性の生涯を通して排卵できる数は500個未満であり、それ以外の卵胞は成熟する過程で退化してしまいます。

思春期以降になると卵胞は成熟を始め、月経周期ごとに、脳にある「下垂体(かすいたい)」と呼ばれる場所から、分泌される「卵胞刺激ホルモン(FSHといいます)」によって原始卵胞は発育し、成熟していきます。

卵胞の発育が進むと、排卵の準備ができた「成熟卵胞(グラーフ卵胞)」となります。成熟卵胞になると、大きさは18ミリ以上となり、卵巣の表面が盛り上がってきます。成熟の過程の卵胞からは、「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンが盛んに分泌され、それに反応して下垂体からは「黄体形成ホルモン(LH)」が多量に分泌されます。LHの大量放出は「LHサージ」と呼ばれ、LHサージの約36時間後に卵胞の壁を破って中から卵子が放出されて、排卵に至ります。

排卵後の卵胞は「黄体(おうたい)」に変化して、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンを分泌します。黄体から分泌されるホルモンの作用で、子宮内膜においては受精卵が着床する環境を整えたり、妊娠が成立すると妊娠を維持できることになります。妊娠が成立しない場合には、黄体は萎縮していきます。黄体の萎縮に伴って、エストロゲンやプロゲステロンの分泌量が減り、子宮内膜が脱落して月経となります。

まとめると、卵巣には「女性ホルモンを分泌して月経周期をコントロールする機能」と「脳の下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(FSHとLH)によって、卵巣内の卵胞が成熟し、排卵する」という2つの重要な役割があります。

卵巣がんの原因 出産経験、初経、閉経時期も関係

卵巣癌(がん)は、婦人科で扱う悪性腫瘍の中で死亡率が最も高い癌であり、症状に乏しいため「サイレントキラー(無言の殺人者)」と呼ばれているほどです。また、近年卵巣癌の患者数は増加傾向にあります。

卵巣癌はさまざまな遺伝子の変異の積み重ねで生じます(遺伝するという意味ではありません)。現在のところ直接的な原因は明らかとなっていませんが、卵巣癌の多くが、閉経後に発症しています。排卵による卵巣表面の傷が癌化の一因であるという説もあり、排卵回数が多いほど危険性が高まる、つまり、出産を経験していない方や、初経が早かった方、閉経が遅かった人のほうがリスクが高いということになります。経口避妊薬(ピル)を服用していた人や複数の子供を生んでいる方、母乳で育児をしている方では、卵巣癌の発生が少ないというデータもあります。また、食生活の欧米化による脂肪の摂取量が、卵巣癌の発生に関連しているという指摘もあり、日本人が米国に移住した場合に卵巣癌の発生が多くなるという報告もあります。

卵巣がんの原因 遺伝も関係する?

一方で家族発生する遺伝による卵巣癌も存在し、主に「BRCA(Breast Cancer Susceptibility Gene)」という癌を抑制する遺伝子の異常が、高い確率で見られることが分かっています。日本における家族性卵巣癌の発生率は卵巣癌全体の5%程度ですが、親や姉妹などに乳癌や卵巣癌の患者がいるようならば、注意が必要です。最近の例では米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝的に癌などになるリスクを考えて、予防的に乳房や卵巣摘出を行ったことはニュースとなりました。

また最近では、卵巣にできた子宮内膜症(「チョコレート嚢胞」)から卵巣癌が発生することも分かってきました。チョコレート嚢胞は20歳代から30歳代の生殖可能な女性に起き、女性ホルモンであるエストロゲンが減少する閉経期に軽くなりますが、卵巣癌へ移行するのは閉経前後の45歳ごろから増加する傾向があります。

卵巣がんには種類がある?類内膜腺癌とは?明細胞腺癌とは?

卵巣の腫瘍は、初期は症状に乏しいですが、人の体内で大きな腫瘍を作りやすく、数多くの種類が存在します。卵巣の組織には、卵巣の表面をおおっている「表層上皮(じょうひ)」、卵子のもととなる「胚(はい)細胞」、性ホルモンを産生する「性索間質(せいさくかんしつ)」があります。これらすべての組織から腫瘍が発生する可能性があるため、非常に種類が多いのです。一般的に腫瘍は「良性腫瘍」と「悪性腫瘍(癌)」に分けられますが、卵巣にできる腫瘍には「境界悪性腫瘍」と呼ばれる良性と悪性の中間的な性質を持った腫瘍もあります。

卵巣腫瘍の3つの組織型のうち最も多いのが表層上皮性の腫瘍で、一般的に卵巣癌と言われるときには、表層上皮性の悪性腫瘍を指すことがほとんどになります。表層上皮性の卵巣癌は主に以下の4つに分けられます

・漿液性(しょうえきせい)腺癌
・粘液性(ねんえきせい)腺癌
・類内膜(るいないまく)腺癌
・明細胞(めいさいぼう)腺癌

いずれも、40歳から60歳代で発症することが多いです。4つの種類の中で一番頻度が高いのが「漿液性腺癌」で45%程度を占めており、抗癌剤がよく効くとされています。一方、約20%を占め、日本に多い明細胞腺癌や粘液性腺癌は抗癌剤が効きにくいとされています。

胚細胞腫瘍とは?性索間質性の腫瘍とは?

胚細胞腫瘍は、表皮上皮性の腫瘍と対照的に、好発年齢が10歳代から20歳代と若いことが特徴です。ほとんどが「奇形腫(きけいしゅ)」と呼ばれる良性腫瘍ですが、まれに胎児性癌や絨毛(じゅうもう)癌などの悪性腫瘍が発生することもあります。若い方に発症することが問題となりますが、抗癌剤がよく効くため、治る可能性も十分に見込めます。

性索間質性の腫瘍は、性ホルモンを生み出すために症状が現れやすく、他の卵巣腫瘍と比べて発見されやすいです。由来とする細胞によって、良性から悪性まで種類があります。

また、卵巣癌の原因としては卵巣以外の他の臓器からの転移ありえます。最も多いのは胃癌や大腸癌からの転移による「Krukenberg(クルーケンベルグ)腫瘍」と呼ばれるものになります。

卵巣がんのステージの考え方と生存率 ステージ4とは?

卵巣癌の治療は手術が基本となり、治療方針の決定や予後(治療後の見通し)を推測するためには、癌の広がりを知ることはとても大切になります。手術前には超音波検査やCT、MRIなどの画像検査を用いて癌の広がりを推定しますが、卵巣癌は骨盤の深い所にあるため、最終的には手術によってステージ分類(進行期分類)を行います。

卵巣癌のステージ分類は国際産科婦人科連合(FIGO)による分類が用いられています。概要は以下の通りです。

I期→癌が卵巣だけにとどまっている状態
II期→癌が骨盤内の子宮や卵管、直腸、膀胱などに広がっている状態
III期→癌が骨盤を越えて上腹部の腹膜や胃の周りにある大網(だいもう)、小腸に転移していたり、リンパ節に転移している状態」、Ⅳ期は「癌が肝臓や肺など遠くの臓器にまで転移している状態(遠隔転移)

また、それぞれの病期でも、広がりだけでなくどの程度癌が進展しているかによって、IからIII期については、さらにaからcまでの3つに分かれており、Ia期などのように表現します。

卵巣は子宮の裏側の骨盤の深いところにあるため自覚症状に乏しく、適切な検診方法もないことから発見が遅れるケースが目立ちます。卵巣癌のおよそ半数がIII・IV期の状態で発見されると言われています。各ステージの5年生存率(治療開始から5年後の生存率)については、I期で90%、II期で70%、III期で35%、IV期で20%とされており、進行とともに治癒が期待できなくなります。


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卵巣癌の原因や種類についてご紹介しました。親族や友人が卵巣癌になるなどして、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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