脳梗塞の薬と手術治療、リハビリ、入院 t-PAとは?費用の目安は?お見舞いの考え方、治療期間、入院期間も解説

  • 作成:2016/03/18

脳梗塞になった場合、薬による治療や手術による治療などの選択肢があります。「t-PA」とは、脳梗塞の原因となった血栓を溶かす治療法です。入院期間や治療費、お見舞いの考え方を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

脳梗塞の治療を知ろう
脳梗塞は薬で治療できる?点滴をすることもある?
脳梗塞の手術はどんなもの?
t-PAって何?どんなもの?
t-PAの問題点
脳梗塞だと、必ず入院する?入院しないケースもある?
脳梗塞の治療期間はどれくらい?
脳梗塞の入院期間はどれくらい?
脳梗塞後のリハビリはどんなもの?どんな効果が期待できる?
脳梗塞の治療費用の目安
脳梗塞患者のお見舞いは可能?

脳梗塞は薬で治療できる?点滴をすることもある?

脳梗塞の薬による治療は、「急性期」と「慢性期」に分けて行われます。急性期のうち超急性期(発症4.5時間以内)に行う血栓をt-PAによって溶かす治療は、「t-PAの項」に後述します。

1.急性期の治療;静脈からの点滴が主体
(1)血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬:こうぎょうこやく);発作後48時間以内の血栓性脳梗塞の患者さんに、さらに血栓ができたり、より大きくなるのを防ぐために使います。静脈から1週間、薬(アルガトロバン)を点滴します。

(2)血小板の働きを抑える薬(抗血小板薬:こうけっしょうばんやく);発作を起こしてから48時間以内の場合はアスピリン、5日以内の場合は「オザグレルナトリウム」という薬を患者さんに投与し、血栓が大きくなるのを防ぎ、脳の血液の流れを良くします。アスピリンは飲み薬、オザグレルナトリウムは点滴のお薬です。

(3)脳の神経細胞を守る薬(脳保護薬:のうほごやく);発作から24時間以内に使用すると、脳梗塞により発生する活性酸素(かっせいさんそ;さらに脳細胞を攻撃します)を消そうとする薬(「抗酸化薬」と言います)です。静脈から点滴で使う薬の「エダラボン」は、世界に先駆けた、日本発の薬です。

(4)脳の腫れをとる薬(脳圧降下薬:のうあつこうかやく);脳梗塞では、病気で変化した部分の周りに水のたまる脳浮腫(のうふしゅ)によって、脳が腫れます。大きな梗塞では脳の圧が非常に高まり、命に関わることもあります。点滴薬の「グリセロール」を使って、脳内の圧力を下げます。

2.慢性期の治療;
大きく分けると「再発を予防するため」と「脳の血流と代謝(たいしゃ)の活動を高めるため」の2つの薬が内服(ないふく;飲み薬)で出されます。

「再発予防薬」:急性期の(1)抗凝固薬と(2)血小板薬と同じ作用のお薬が、脳梗塞の種類によって使い分けられます。例えば、「心原性脳塞栓症」というタイプの場合は、心臓内に血栓ができないように、「ワーファリン」という抗凝固薬が使われ、血液の固まりにくさが、出血の副作用を起こさない程度に厳密にコントロールしながら使われます。

「脳循環代謝改善薬(のうじゅんかんたいしゃかいぜんやく)」:慢性期には、病気が起きた部分の周囲、またはもっと広範囲で、脳の血流や代謝が低下し、さまざまな後遺症を起こしています。めまいなどの後遺症や精神面の症状を改善し、日常の生活範囲を広げるのに役立つとされています。

脳梗塞の手術はどんなもの?

脳梗塞によって死んでしまった神経細胞や組織は、外科的な手術によっても生き返らせることはできません。したがって、脳梗塞に対して行われる手術は、発症や再発を予防するためのもので、急性期の脳梗塞に対して行われるものではない点は、注意が必要です。主なものは次の2つです。

1.内膜剥離(ないまくはくり)術;
「内膜」とは動脈の壁にある3層のうち、もっとも内(血液)側の膜です。頚部(くび)にある脳へ行くもっとも太い動脈(内頚動脈:ないけいどうみゃく)に、狭窄(きょうさく;動脈硬化で内膜が厚くなり狭くなっている状態)があると、脳梗塞の再発の重大なリスクになります。

手術は、動脈を開いて厚くなった壁(内膜)をくりぬきます。これまでに「TIA(一過性脳虚血発作)」などの症状があり、70%以上狭くなっている(血液の通り道が本来の30%以下ということ)患者さんに対して行実施します。手術を行うことにより、薬だけで治療した場合より、再発が少なくなることがデータで示されています。

2.EC-IC(頭蓋骨の外側と内側)バイパス;
閉塞(へいそく;完全に詰まってしまった)、または狭窄した太い脳の動脈のさらに先の血管(「IC」と言います)に、頭皮を走る血管(「EC」と言います)をはがしてつなぎ、バイパスをつくる手術です。つながった血管から、血流が新たに確保できるため、今後起こりうる脳梗塞の再発を予防する効果が期待されます。まだ、科学的に確かではありませんが、一部の認知症の症状が進むのを予防する効果があるかも知れないといわれています。

t-PAって何?どんなもの?

「t-PA」とは、「組織プラスミノゲン・アクチベーター」という点滴で、静脈から投与する薬です。脳梗塞の治療の中では特殊なものの一つである、「血栓溶解療法(けっせんようかいりょうほう)」という方法で治療する場合に使います。

簡単に言うと、脳梗塞を起こしたら直後に、原因となっている動脈に詰まった血のかたまり(血栓)をt-PAで溶かす方法です。動脈が詰まって間もないうちに、脳梗塞の場合、血が流れなくなった先の脳細胞が死にます。ですので、血液の流れを回復させれば、脳の細胞が死んでしまわないで済むことになります。t-PA治療を受けた場合、約4割の患者さんは、症状がほとんどなくなる程度まで回復します。治療開始はより早いほど、より高い効果が期待できるとされています。「t-PAによる経静脈血栓溶解療法」は素晴らしい治療法ですが、問題点もあります。

t-PAの問題点

脳の動脈が詰まると、時間の経過とともにその周りの脳の組織は死にはじめます。壊れて弱くなっている組織があるところに、血栓を溶かす薬を使って血液の流れを回復させてやると、元来もろい組織である脳では出血を起こす危険が高くなります。

そのため、どのような状態の人にt-PAを使うと、脳出血を起こさないで早く回復させることができるかということが、これまで詳しく検討されてきました。当初は、「発症から3時間以内」の脳梗塞患者さんに限って使用されていましたが、その後、海外の臨床試験(医療の効果を確かめる試験)で、「発症から4.5時間以内」まで、有効で安全な治療法であることが確認されています。日本でも2012年9月から発症4.5時間以内まで使用可能時間が延長されています。

日本では、2015年末の時点で、「遺伝子組み換え組織プラスミノゲン・アクチベーター(rt-PA;アルテプラーゼ)」という種類の薬のみが保険適応されています。rt-PAの使用にあたっては、脳の出血という重大な副作用を起こさないために、絶対に使えない条件(除外項目)や慎重に投与するべき項目が、細かく定められています。

脳梗塞だと、必ず入院する?入院しないケースもある?

血のかたまりが詰まって起こる血栓性の脳梗塞で、超急性期(「発症から4.5時間以内」)の血栓を溶かす治療が必要と判断された患者さん、つまりt-PAが可能と判断された患者さんは、即入院となります。ただ、血栓を溶かす治療の適応がない患者さんで、「TIA(一過性脳虚血発作)」を含む“急性の脳梗塞”(新たに症状が出たもの)では、マヒなどの症状が一時的であったり、比較的軽症の場合もあります。そういった患者さんでも、経過観察のため入院が必要になることがほとんどです。主な理由は、(1)さらに本格的な梗塞が起こる、または広がる可能性がある(2)脳梗塞の原因である体全体の状態や病気(高血圧、糖尿病、不整脈など)をチェックしたり、コントロールする必要がある。(3)発作直後はベッド上の安静が望まれるため―が挙げられます。

脳ドックの精密検査時やMRI検査で偶然見つかることも多い小さな脳梗塞で、患者さんに自覚症状がないものは、「無症候性(むしょうこうせい)脳梗塞」(いわゆる「かくれ脳梗塞」)といわれます。無症候性脳梗塞は、発作を起こす症状のある脳梗塞(専門的には症候性脳梗塞とよばれます)が起きるリスクを高める1つの要因となっています。今後、脳梗塞の発作を起こさないように血圧のコントロールなどが指導されますが、見つかったその日に入院となることは少ないでしょう。

脳梗塞の治療期間はどれくらい?

脳梗塞の治療は、急性期と慢性期に分けられます(治療については、別の記事で解説)。急性期脳梗塞の治療は、血小板の働きを抑える薬や脳の神経細胞を守る薬などの点滴が、長いものでも約2週間で終了します。一般的に、急性期の脳梗塞の治療期間は、10日から2週間くらいです。

ただ、当然ですが、治療期間は、重症度や合併症などによって異なります。例えば、軽症の「ラクナ梗塞」の患者さんであれば、1週間以内のこともありますし、逆に重症の心原性脳塞栓症の方では、循環や呼吸の状態が安定しなければ、気管にチューブを入れて(気管挿管;きかんそうかん)人工呼吸しながら、点滴での管理が2週間を過ぎて続くこともあります。

脳梗塞の入院期間はどれくらい?

入院期間については、数字が2つあります。急性期脳卒中の専門病院や救急医療センターなど緊急を要する治療を専門的に扱い、回復期のリハビリをすることなどを主な目的とした病棟(リハビリ病棟)をもたないタイプの病院では、急性期の集中的な治療、および急性期リハビリ終了後、自宅へ退院またはリハビリ専門施設へ移ることになります。脳梗塞を発症して、急性期としての入院期間(ひとまず安定して退院または転院が可能となるまで)は、およそ20日間が平均的なようです。

症状の程度が、中等症から重症の患者さんの中には、急性期が過ぎた後1カ月前後からはじまる慢性期に、後遺症を軽減するためのリハビリが必要となる方がいます。その場合、慢性期リハビリ病棟またはリハビリ専門病院で、回復期リハビリを含む治療が引き続きおこなわれることになります。回復期リハビリ期間も入院期間に含めた数字は、厚生労働省の2014年患者調査の概況によれば、90日から100日、およそ3ヶ月となっています。

脳梗塞後のリハビリはどんなもの?どんな効果が期待できる?

一般に脳梗塞が起きた後のリハビリテーションの流れとしては、「急性期」「回復期」「維持期」に分けられ行われています。

1・急性期リハビリ; 発症早期(軽症で可能であれば当日)から開始される傾向にありますが、第1の目的は「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」の予防です。廃用症候群とは、寝たままの安静状態でいた期間が長く、身体を動かさなかったために起こる筋力の低下や関節が動かなくなることをいいます。

日常生活の動作の訓練を中心に行い、患者さんがベッドから起きあがり、自立することをめざして進められます。症状が軽ければ急性期リハビリを終了した段階で、自宅復帰や社会復帰できる場合があります。海外のデータでは早期からの退院を支援するリハビリを行うと、「ADL(Activities of Daily Living;日常生活動作)」や「QOL(Quality Of Life;生活の質)」といった指標の向上、つまり患者さんにとっての発症後生活などへの良い影響がみられ、長期的な効果もあるとされています。

2.回復期リハビリ; 脳梗塞の発作後、約1カ月以降の症状や、後遺症が中等度から重度など軽くない場合に、回復期リハビリテーション病棟のある医療機関が中心となって行なわれます。ゴール(到達目標)を設定し、さらに集中的なリハビリテーションが行われ、効果が期待できる患者さんに対して、セルフケア、移動、コミュニケーションなど、能力の最大限の回復および早期の社会復帰を目指すことになります。集中的リハビリによりADLが向上し、自宅への退院率が上がるというデータがあります。

3.維持期リハビリ;慢性期の脳梗塞の患者さんが、回復期のリハビリにより獲得した能力をできるだけ長期に維持するために実施されます。訪問リハビリや外来リハビリ、地域リハビリなどが利用されます。

脳梗塞の治療費用の目安

治療費の概要は、それぞれ病状の重さなどで一概には言いづらいです。ここでは、急性期に薬による血栓の溶解療法を行い、その後の慢性期に後遺症を軽減するためのリハビリをしばらく行うことを想定して考えてみます。脳梗塞の平均在院日数(入院している機関)にあたる約3カ月の90日間入院した場合を例にとってみましょう。

1日の治療費の目安は、2万5千円から3万円くらいになります。治療費の1カ月計は75万から90万円になり(自己負担の上限額を一定にするため、上限額を超えた分が支給される「高額療養費制度」の対象となります)、3カ月の総治療費は250万円前後となります。実際の費用負担額は、70歳未満の場合の自己負担3割の方だと約75万円、自己負担額1割の高齢の患者さんだと25万円くらいになりますが、高額療養制度が適応されると、それぞれ、30万円弱(一般的な所得だとして)、13万円前後となります。あくまでも医療費の概算です。紹介した治療費に加えて、入院中の食事代や差額ベッド代(個室の利用などで、病院によってかかる場合があります)などの負担が必要になることがあります。3カ月入院となると、食事代などの方多くがかかることが想定されますが、計算にはは含まれていませんので、ご了承ください。

脳梗塞患者のお見舞いは可能?

「ICU(Intensive Care Unit;集中治療室)」という言葉を、お聞きになったことがある方も多いと思いますが、さまざまな種類の重症患者さんを集中的に管理している病棟です。脳梗塞の急性期の患者さんも、ふつう一般病棟ではなく、「SCU」または「SU」(Stroke Care UnitまたはStroke Unit;脳卒中治療室)と呼ばれる専門病棟で管理されることが多くなっています。特に、脳卒中専門病院や医療センターのSCUなどでは、専門の医療スタッフがモニター監視下で、集中的な治療と早期からのリハビリを計画的かつ組織的に行っています。

お見舞いができるどうかは、もちろん患者さんの状態や行われている治療の状況で決まりますが、状態が安定している患者さんでは十分可能だと思われます。ただし、一般病棟が午後の数時間が面会時間となっていることが多いのに対して、SCUなどはICUと同様に、30分から1時間程度の時間内での面会可能時間を1日2回くらいに定めていることが多いようです。お見舞いは可能ですが、集中的な治療を行っている病棟ですから、長居はせず短時間で済ませるようにしたら良いでしょう。詳しくは、お見舞いをしたい方が入院している病院のホームページを確認したり、電話できいてみたりすると良いでしょう。


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脳梗塞の治療や入院などについご紹介しました。家族や知人が脳梗塞になる不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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